店舗M&Aの譲渡価格の相場
近年、大企業だけではなく中小企業でも盛んに店舗M&Aが行われています。円滑な事業継承や新たな事業展開を目的として、店舗のM&Aを検討しているオーナーの方も多いのではないでしょうか。しかし、一体いくらで売却できるのか、または購入できるのか、不明点も多くあります。良い条件で交渉を成立させるためにも、譲渡価格の相場を知っておくことが必要です。今回は、これから店舗M&Aを検討する方のために、譲渡価格の目安や相場の計算方法について紹介します。
最近のM&A傾向
中小企業や個人事業主でも活発化する「M&A」
日本におけるM&Aといえば、大企業が行っているものという印象です。大企業が新たな事業展開として、M&Aを行ったというニュースを見たことがある方が多いのではないでしょうか。
しかし、最近では、大企業だけではなく中小企業においても活発に行われています。数店舗のみを運営する個人事業主がM&Aを行うことも珍しくありません。このように、小規模なM&Aが、日本において増加傾向にあります。
中小企業や個人事業主で「M&A」が活発化している要因
それでは、なぜこのような傾向になっているのでしょうか。その原因の1つに、「多店舗展開の難しさ」があります。1店舗目自体が上手くいっていない場合もありますが、1店舗目が繁盛しても、その後多店舗展開できないオーナーが多いのです。
1店舗目の出店は、店のオーナーが自分で切り盛りし、自分がスタッフの穴埋めをすれば何とかなります。組織に運営や、シフトの組み方など経営的な知識が乏しくとも、自分自身の関与度が高いため、何とか運営していけるのものなのです。
とことが、2店舗目となるとそうもいかなくなり、新たな物件を取得したとしても、店舗運営を組織的に行う必要があり、昨今の人材確保難も手伝って、思ったように多店舗展開を実現できません。こうなると、将来が描けなくなって売却を考える店舗オーナーが多数出て切るわけです。
逆に買い手からすれば、M&Aによる事業を取得するのであれば、このような問題克服して店舗展開が可能となるわけです。そのため、新たな事業展開として、中小企業や個人事業主によるM&Aが盛んになっているのです。
M&Aポータルサイトの出現
M&Aポータルサイトの出現も、小型のM&Aのが増えている大きな理由の一つです。様々なマッチング機能をもったM&Aマッチングのポータルサイトが次々に生まれてきており、これらの使い勝手の向上とともに、金額の小さい案件についても、流通が可能となってきて、M&Aの増加傾向に拍車をかけています。
譲渡価格の目安
M&Aの譲渡価格の計算の基本は
利益 × 評価倍率 + 実態純資産 = 理論上の評価額
となっており、利益 × 評価倍率 の部分が「営業権」として評価される部分です。
「評価倍率」については、後述しますが、計算の最も基本となる部分は、どのくらい「利益」が出ているのか、ということですが、それ以外にも評価に買手が評価する部分について、ここで確認しておきます。
実質的な利益はどの程度か?
売却しようとする店舗や事業の損益を計算する場合、社内で作成している収支計算表や損益計算書を実態に合わせる必要があります。個人企業や中小企業が作成した店舗の損益計算は、本当の意味での店舗の利益の計算と乖離している場合がほとんどです。経営者の給与、経営者の私的な経費、減価償却費等を調整して、純粋な事業における損益を計算しておきましょう。
立地は良好であるか?
やはり、店舗の立地は譲渡価格を左右する大きな要因の1つです。特に、駅近物件は高く評価されます。「駅前にどうしても出店したい」という企業は多いので、売却価格が跳ね上がることも少なくありません。飲食チェーン企業が買収を検討する場合、物件が好立地であれば、仮に現在の事業がうまくいかなくても、既存の事業への転用を描きやすいため、買収に乗り出しやすいこともあり、好立地であることは重要な査定ポイントとなります。
内装の状態は?
店舗の内装がそのままの状態で使用できる場合は、譲渡価格が高くなる可能性があります。買手が内装工事するコストを削減できるので、評価されやすいです。店舗の床や壁が、オシャレで清潔感がある場合は、さらに評価が高くなるでしょう。
規模はどれくらいか?
個人事業主の場合、30坪を超えるような規模の店舗を経営している方は少ないと思います。15坪程度の大きさで、店をやりくりしている方が多いでしょう。一見、規模が大きいほど評価されやすいように思いがちですが、実際はそうとは限りません。事実として、15坪程度のサイズが最も需要があります。
口コミや評判は?
店舗のブランドイメージも査定ポイントの1つです。ネット上での口コミや評判は、譲渡したい店舗の評価に影響を与えます。買手は、SNSやグルメサイトから店舗の情報を得ることが多いので、注意しましょう。ミシュラン一つ星など明確なブランド力が存在する場合、特に高額で取引されている事例を見受けます。
集客力や客層は?
売却する店舗で、どれくらいの集客が将来見込めるのかは重要な査定ポイントです。すでに繁盛店であればお客がついてる店舗は評価が高くなりますが、売却する店舗がそこまで繁盛しているケースは少ないので、購入者は、営業を改善する必要があります。 時間帯別、日別、月別の客数や客層をデータ化しておくことで、購入者の営業改善を具体的に描きやすくする準備をしておくのも譲渡価格を高めるコツの1つです。
計算式やシミュレーションを紹介
店舗数によって相場は異なる
譲渡価格の目安として、売却額の相場を計算する式があります。しかし、経営している店舗数によって、相場の計算式は異なります。そこで、店舗数に応じた計算式をまとめたので、見ていきましょう。
店舗数が5店未満の場合
経営している店舗数が5店未満の場合は、「償却前利益×3~5年分+純資産」で相場を計算できます。償却前利益は、純利益と減価償却費の合計です。それでは、簡単な例を紹介します。 「純利益が400万円、減価償却費が200万円の居酒屋を4店舗経営しており、純資産が2000万円」の場合、譲渡価格の相場は9200万円~1億4000万円程度になります。 償却前利益(600万円)×店舗数(4店舗)×3~5年分+純資産(2000万円)=9200万円~1億4000万円
店舗数が10店以上の場合
経営している店舗数が10店以上の場合は、「償却前利益×5~10年分+純資産」で相場を計算できます。それでは、簡単な例を紹介していきましょう。
「純利益が350万円、減価償却費が150万円の居酒屋を15店舗経営しており、純資産が4000万円」の場合、譲渡価格の相場は4億1500万円~7億9000万円程度になります。
償却前利益(500万円)×店舗数(15店舗)×5~10年分+純資産(4000万円)=4億1500万円~7億9000万円
まとめ
店舗M&Aを行う前に、譲渡価格の相場をあらかじめ知っておくことが重要です。仲介者に依頼した価格が明らかに低い場合には、なぜ低いのかをしっかりと業者に確認しましょう。また、他の業者にも査定依頼して、査定額の信憑性を確かめることも必要です。簡易価格査定システム等を利用してみるのも手っ取り早い方法です。今回紹介した相場は、あくまで目安の1つなので、業者と相談して、納得のいく条件で交渉を成立できるようにしましょう。
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