事業承継とM&Aの違いとは?
近年は、事業承継、M&Aそれぞれの単語をよく耳にし、M&Aと事業承継は一緒に語られることが多くなりました。そのため、両者は同じ意味を持つと混同されがちですが本来は、事業承継の一つの手法として、M&Aによる手法が一般化してきたことがこの混同を生んだと考えられています。では、事業承継とM&Aの本来の意味とは何でしょう?今回は、事業承継とM&Aについて詳しく解説していきます。
M&Aとは?
M&Aとは、「Mergers and Acquisitions」を略したもので「合併と買収」という意味になります。M&Aには、企業全体の合併と買収だけでなく事業譲渡や株式譲渡、株式交換、新株引受、会社分割などの手法があります。もともと、M&Aとは大手企業の業務提携や事業譲渡の際に活用される手法でしたが、近年は、多くの中小企業が事業承継問題をM&Aで解決するようになってきています。そのため、小規模な飲食やサービス業でも事業継続の手段としてM&Aが注目されています。
飲食店やサービス業等の小規模の運営会社が売買されるケースでは、買い手には新規事業への参入や事業規模を大きくするなどの目的があるのが一般的です。一方、売り手は自社の核となる事業の強化を計る場合や資金調達などの目的でM&Aを実施します。また、近年の飲食業界においては、経営者の高齢化や様々な世相の変化により、多くの飲食店が後継者不足に悩まされています。そのため、生き残りをかけ事業承継のためにM&Aを実行しているケースも増えてきました。
実際に、M&Aを経営戦略の手段として成長している飲食店や中小企業もたくさん見受けられるようになっています。飲食業界は特に、大規模で資金が潤沢な企業は多くはないため、一度経営不振になれば立て直すのが難しいお店がたくさん存在します。しかし、M&Aで大企業に買収されれば、資本の助けを得られやすくなり、大企業の後ろ盾があれば経営再建も難しくはなくなります。そのため、傘下に入ること自体を目的にM&Aを実施することもあるようです。大手企業の傘下に入れば、売り手の経営者や従業員はそのままで、資金援助や知的援助などを受けることが可能です。その結果、これまでより大きな成長が望めるというメリットがあります。
事業承継とは?
事業承継とは、世代交代などで会社やお店の経営を後継者に引き継ぎ、社長が変わることを意味します。中小企業や飲食店の場合、社長やオーナーの経営手腕が自社の基盤となっていることが非常に多く、事業承継が会社の命運を左右しかねません。そのため、次の後継者を「誰」にして経営を引き継ぐかという「経営の承継」は重要な案件となります。また、事業承継には単に「経営の承継」ということだけではなく、自社の経営権や自社株を誰に引き継ぐかという「所有の承継」と「後継者の教育」も重要な課題に入ります。
これまでは、会社や店を引き継ぐ際に経営者が検討する後継者の選択肢は、親族内での承継が最も多く、次に自社役員や社員が一般的でした。 しかし、近年は職種の多様化や誰でも職種を自由に選択できることから、親族内や自社役員、社員での承継は少なくなってきています。それに反比例するように、後継者が見つからず廃業を余儀なくされるケースが多くなりつつあります。
近年、飲食やサービス業の小規模事業の後継者不在が問題になる中、親族外承継も増える傾向にあるようです。これには、これらの小規模事業者の事業承継の問題解決にも、手段としてM&Aを活用しているからと考えられます。飲食業の事業引継ぎの場合は、一つの店舗単位で譲り渡しができるため、事業承継にM&Aを活用することによって、最適な買い手を探すことが可能になります。その結果、小規模な店舗単位でも事業承継がスムーズに行えるようになります。
後継者不在時のM&A活用
前述したように、近年は飲食業界の後継者不在が問題になっています。特に、家業のような形で経営してきた店は、経営者の高齢化などの理由から、後継者不在で廃業することが多くなってきているようです。廃業はこれまで培ってきた技術やノウハウを無にし、従業員にも大きな影響を与えるため、経営者にとってはできるだけ避けたい選択肢です。
売り手から見た場合、一見赤字や業績不振はM&Aを実行する際のマイナス要因という認識がありますが、現実はそうとは限りません。2000年代の初頭には、大手企業同士のM&Aが度々行われM&Aの有効性は広く知られています。そのため、買い手が将来性を認めた会社であれば、赤字や業績不振、後継者不在であっても買収されるケースは少なくはありません。
経営してきた店舗が後継者不在という理由で廃業する場合、数十年継続して小寺店であれば十分M&Aの対象となり得ることを知っておきましょう。
まとめ
M&Aがもともと、大企業間の経営戦略の手法であったため、小規模店からするとM&Aを利用することはハードルが高いと考えがちです。しかし、近年は飲食業界に特化したM&A仲介業者も増えてきていて、M&Aの活用は難しいことではなくなっています。これまで培ってきた技術やノウハウを生かし、お店は廃業せずに引き継ぐことができれば、それがベストの選択だと言えるでしょう。その点を踏まえ、事業承継については、飲食業界に強いM&A仲介業者に相談してみることをおすすめします。
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